本品は19世紀中期(推定:1830〜1850年代頃)、
フランス地方工房にて製作されたと考えられるキャビネットです。
意匠にはルイ15世様式に由来する曲線的な造形が取り入れられており、
都市部における様式変遷とは異なり、
地方において伝統的な意匠が継続的に用いられていた時代背景をよく示しています。
過度な装飾性に偏らず、実用性と造形の均衡が保たれている為、
当時の地方家具であると考えられます。
構造面では、一般的な蝶番ではなく、
扉側から延びる軸を本体枠へ貫通させナットで固定する構造が採用されています。
これは重量のある無垢扉を確実に保持するための合理的な手法であり、
分解・調整を前提とした実用的設計思想を感じさせます。
使用されたナットやボルトには、鍛冶仕事ならではの風合いが残されています。
扉にはクレモンボルトが用いられており、内側操作を前提とした構成から
、使用環境に応じた実用本位の設計思想がうかがえます。
工業化以前の技術環境の中で、入手可能な材料と技術をもとに
合理的に組み立てられた構造を今に残しています。
ルイ15世様式に由来する柔らかな曲線が随所に見られる一方で、
構造面には素朴で力強さが残され、
伝統的様式の継承と実用的要求との間で成立した造形は、
地方家具に特有のものであり、都市部の様式家具とは異なる価値を形成しています。
19世紀前半から中期にかけての過渡期において、
伝統的意匠を継承しながらも実生活に合わせて構築された地方家具の一例であり、
単なる装飾品ではなく、日常の中で使われ続けてきた
当時の生活のリアルを現在に伝える価値を備えた一品であり、
素朴で温かみの感じられる造りが、
心を落ち着かせてくれる空間を演出してくれる事かと思います。
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(size: W1160 D630 H2700 程度)
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